ドリブルにキレがある、空中戦に強い、決定力がある、カウンター攻撃に秀でている、早い球回しができる、鉄壁の守備…TV中継でクローズアップされる類の言葉ばかりが選手やチームの賞賛に使われる。しかしサッカー観戦にのめり込めば込むほど決定的なプレーの裏側も気になってくるものだ。そういった熱狂的なサポーターが試合の勝敗の背景まで語ろうとする時キーワードの一つとなるのが”怪我”である。怪我をしない選手はチームのリズムを作り、怪我人が多いチームはリーグの終盤で勢いを失う。
上記はプレミアリーグトップ7チームの1213シーズン~1314シーズン(36節迄)の怪我人事情をまとめたグラフだ。(1人の選手が1週間離脱する毎に1ポイントが加算される。)プレミアはレフリーの笛の音が中々鳴らない上に、平気で1週間に3試合を押し込むことで有名だがいくつかのチームは上手く怪我と付き合っている。その筆頭がチェルシーだ。【injuryleague.comを参照させて頂きました。】
チェルシーは過去2年CLに出場していて日程的には楽ではないが、怪我人の少なさは7チーム内で頭一つ抜けている。injuryleague.comによるとブルースは年齢構成の面でエバートン、スパーズと同様、怪我人が出にくい群に属しているようだ。美人で有名なエヴァ・カルネイロさんを始めとするチェルシーのメディカルスタッフはそのアドバンテージも生かしつつ、ここ数年毎年CL権を確保し、優勝争いにも顔を出すチームの強さを影から支えている。
チェルシーには及ばないがリバプールとマンチェスター・シティも上手くやっている。この2チームは比較的怪我人の出やすい群に属しているが7チームの中では高スコアを維持。以前のリバプールはキューウェル、アウレリオ、トーレス、アッガー、ジェラードなど長期に渡ってコンディションが整わない主力級選手が少なくなかったが現在の長期離脱はエンリケだけに留めている。2010年に臨床スポーツ医学の権威だったピーター・ブルクネル医師を招聘(2012年にチームを離れている)して以来改革に勤めてきたメディカルチームの成果と言えるかもしれない。シティはCLやプレミアのハードな日程をターンオーバーで乗り切るには十分な選手層がある。中でも怪我の多いアタッカーの豊富な選択肢には支えらているはずだ。選手は無理を強いることなくコンディションを整えられる。
シティのすぐ後ろにはヨーロッパのカップ戦がないエバートン、少し離れてトットナム、マンチェスター・ユナイテッドと続く。そして大きな差を空けて411ポイントの断トツ最下位に位置するのがアーセナルだ。誰もがこのチームに対して抱えている”怪我人の多い”イメージが数字にもしっかり表れてしまっている。ディアビ、エドゥアルド、ウィルシャー、セスク、ファンペルシー、ベルマーレン今年に入ってからはウォルコット、シェルストレーム、エジルにラムジー。多少の不運もあるが、チームを引っ張るはずの選手が負傷で離脱するのは今や毎年のお約束だ。この怪我人の多さがいかにチームの痛手となっているかは今年のラムジー離脱後の成績が代弁している。
アーセナルのトレーニングやメディカルチームの批判は単純な怪我人の多さや、あれだけ怪我に悩まされていたセスクがバルセロナでは殆ど負傷をしていない事実などを用いて語られることが多いが今季も改善の兆しは見られなかった。毎年一定以上の結果を残すガナーズだがシーズン終盤まで優勝争いをするためには、スター選手を連れてくる前すべきことがあるかもしれない。
深刻さは違えど、どのチームも”怪我”と戦いながら毎年のシーズンを過ごしている。観戦者の立場でも、選手の立場でもその響きには思わず耳を塞ぎたくなるものだ。それでも、サッカーの一コマ一コマはその忌々しいキーワードを含めて紡がれて行くのである。