3バックの強みと弱み~チリvsブラジルで見えた4つのポイント~

3-5-2の布陣がブラジルW杯で流行している。サッカー戦術クロニクルIIによると、3バックの起源は1970年代の2トップを採用するチームの増加にあるようだ。相手FWが2枚であれば2人のマーク担当とリベロで対応した方が守りやすい、という発想である。しかし中盤でのポゼッションに攻撃の重点が置かれ始めると共にディフェンスの基本形も4バックへと移行した。と、思っているのもつかの間、サッカー王国で開催されたW杯では3-5-2のフォーメーションを採用したチームが悉くGLを突破し、3バック(5バック)が「トレンド」とまで呼ばれている。

Soccer: World Cup-Brazil vs Chile

本記事では決勝TO一回戦でブラジルをあと一歩のところまで追いつめたチリの布陣を教材に3バックの強みと弱みを端的に説明してみようと思う。取り上げるのはチリvsブラジルで見え隠れした4つのポイントだ。記事中で使用するデータはSquawkaSTATS ZONEを参照させて頂いた。

■強みその1(攻撃):サイドでの数的優位
相手のFW2枚のプレスに対して、CB3枚+GKでパスを回せるため後ろでのパス回しが容易となる。フリーになった左右どちらかのCBがボールを持ち上がることによってサイドで数的優位を作ることが可能。下記はチリがブラジル戦で見せた2つの例だ。

例1:ボランチを引き出しスペースを得る

cvsb1

この局面では、右CBのシルバが持ち上がることでグスタボを引っ張り出し、アランギスがフリーでボールを受けることに成功した。当然もう一人のボランチ(フェルナンジーニョ)が中央へのコースを消しにかかるが、この時点で右サイドには3対3が出来上がっている。サンチェスとバルガスが逆サイド側寄りにポジションどりをしているため相手のCB2枚も不用意にカバーへ行けず。この後ビダルが半身でボールを受け前を向き良い形を作ったチリだったが、トラップが足元に詰まりミスパスに終わっている。

例2:4対3の局面から決定機

cvsb2

今度はグスタボがアランギスへのパスコースを塞いできたパターン。イスラがワイドに開いてフッキを引き付けていることで縦のコースが空くたき、シルバは透かさずビダルへパスを通す。この時グスタボはシルバとアランギスの2人を見ているため中途半端なポジショニング。故にマルセロもアランギスの前のスペースが気になりビダルを潰しに行けない。結果、ビダルが容易に前を向きエリア内への侵入するに至った。この攻撃の流れから右サイド深い位置でブラジルのスローインとなり、そこでミスが起こってチリが同点弾を上げた。

 

■強みその2(守備):中央突破を許さない
3-5-2の布陣ではディフェンス時、外のスペースはWBに任せ、中央のを3人+ボランチで埋める形を取る。そのため必然的にエリア内に人が密集し中央からの攻撃を受けにくい。チリがブラジルのセンターFWに(フレッジとジョー)に殆ど仕事をさせなかったことがその一例だ。2人がエリア内でボールを受けた数は、延長戦も合わせて合計5回に留まっている。エリア内に侵入されピンチを招いた際にもゴール前に密集地帯を作れるため、弾き返す場面がしばしば見られた。

fred-stapp
(フレッジがパスを受け取った数/場所)

【後半】”3バックの2つの弱みは”