ブレンダン・ロジャーズは「リアクションサッカー」を仕込めるか~密集守備にはまった戦術ミスを読み解く~

本記事ではウエストハム戦を1-3で落としたリヴァプールのミスとそのリカバリーを読み解き、ブレンダン・ロジャーズ率いるレッズの今シーズンを展望する。

【呆気なく罠にハマったBRレッズ】
DFラインから丁寧にパスを繋ぎ、最前線から降りてきたFWに縦パスが入ったタイミングで2列目が裏を狙ってゴールに迫る。スピード系のアタッカーを揃えたロジャーズは、1-3で敗れたウエストハム戦で上記のような攻撃スタイルを目指していたはずだ。だが実際には、試合開始早々2枚のCBとボランチに猛烈なハイプレスを受け、DF~MF間でのパス回しを封じられてしまう。結果、3バックにフォーメーションを変える前半20分までは後手後手に回り、呆気なく2失点。中盤でのパス回しが上手く行かずロングボールに頼らざるを得なくなっていたことは下記の比較からも読み取れる。

前半20分までのスタッツ1

【BRの犯した戦術ミス】
2点のビハインドを負った時点で勝点3は絶望的となった訳だが、そもそもの原因は「前線からのコンパクトな守備」に対して「後方からのコンパクトな繋ぎによる攻撃」で応戦してしまったことだ。戦術ミスである。失点場面は不運もあったが、前半開始から試合をコントロールできていればあのような形にはならなかったはずだ。

レッズが採用したのはジェラード、ルーカス、ヘンダーソンで中盤を固め、スターリングに前線のフリーマンの役割を託す形。前述の通り、DF~MFでのボール回しでリズムを作り、裏を狙う策である。この正直な布陣が良くなかった。(下記は前半3分にロブレンがロングボールを「蹴らされた」場面。)

vs西公2

昨シーズンからジェラード+2CBへのプレスには苦戦していたため、ウエストハムのハイプレスは驚くべき奇策という程でもない。恐らく、前節のヴィラ戦でヘンダーソンとジェラードの位置を入れ替え、攻撃にブレーキがかかってしまったこともあり、キャプテンを前方に配置しづらかったのだろう。とはいえ、ヴィラ戦の失敗の原因はヘンダーソンの2列目からの飛び出しが使えなくなったことであるため、「ジェラードにハイプレスがかかった場合ルーカスが1列下がる」ぐらいのオプションは用意しておいて欲しかったところ。上記によってウエストハムの前線からの守備隊に混乱を招くことはできたはずだ。

vsウエストハム20分までのスタッツ比較

話を戻すと、リヴァプールは前線からの守備に人を割くウエストハムに苦戦し、全くリズムが作れず、出せるパスはロングボールか苦し紛れの横パスばかり。前半20分までに自陣で7回ボールを奪われ、ピンチを招く。攻撃面も両SBとヘンダーソンは後方への援護に手を焼き、前線の3枚は孤立。スターリングとバロテッリが独力でなんとかする以外に攻め手はまるでなかった。ウエストハムの激しいプレスに苦戦した様は上記の数値からも読み取れる。

>>【後半】”BRが施した「リカバリー」と今シーズンのレッズ”