では早速4選手の比較に入る。
クルトワ | シュチェスニ | ミニョレ | デヘア | |
失点 | 1.12 | 1.29 | 1.43 | 1.43 |
セーブ | 1.12 | 1.57 | 1.86 | 1.86 |
1失点ごとのセーブ | 1.17 | 1.22 | 1.30 | 1.30 |
キャッチ | 3.04 | 2.29 | 2.57 | 2.14 |
パンチング | 0 | 0 | 0.57 | 0 |
パス成功率 | 57% | 77% | 78% | 67% |
パス長さ | 49m | 43m | 37m | 46m |
パス数 | 13.1 | 15.6 | 15.7 | 16.7 |
■クルトワ
彼のスタッツで目立つのはキャッチ数の多さ。すっとした姿勢の良さから生まれるバランス感覚がハイボールやシュートを弾くのではなく抑えにいくスタイルを生み出しているのかもしれない。無理にキャッチに行くことでハンブルを起こすGKもいるがクルトワの場合目立ったミスは少ない。キャッチの上手さは彼の武器だと言えるだろう。しかし他のスタッツを見ると特別優秀な訳でもなさそうだ。チーム全体として枠内シュートを殆ど打たせていないためセーブ数が少ないのは当然だが、1失点するまでに何回セーブをしているかの指標である「1失点ごとのセーブ率」も1.17と最少。また、攻撃面でもパス成功率57%に留まっている。パス長さが49mと比較的長めであるため成功率の低下はある程度仕方ないが、バルセロナが彼の獲得からあっさり手を引いたことを考えても「足元の技術」は今後の彼の課題となるかもしれない。
■シュチェスニー
守備面ではキャッチ以外クルトワと大きな差はないが攻撃の面では目立っている(もちろん良い意味で)。実のところ彼は「足元の下手さ」を理由に批判されることが少なくないGKだ。しかし今シーズンのスタッツを見る限り、パス長さ43m、成功率77%と、他の3人と比較して「つなぎ」が格段に上手いGKであることを示している。(ちなみに昨シーズンは43m-69%と確かに低水準であった。)是非この調子を維持してもらいたい。
■ミニョレとデヘア
ミニョレとデヘアは失点1.43点、セーブ数1.86回、1失点ごとのセーブ数1.3回とここまで全く同じスタッツ。共にチームの失点が多いためGKは批判されやすいがこの数値を見る限りチームが悪いなりに粘り強く守っているようだ。また攻撃面でも、パス長さ、成功率の兼ね合いを見ると両者ともにクルトワよりは上手くてシュチェスニーよりは下手といった具合である。
この2人の違いを挙げるとすれば「ポジション取り」だ。ミニョレはキャッチ数とパンチングの多さから「前のめりなGK」であると読み取れる。多少リスクを冒してもボールを抑える、前に出て自分が触るといった意識が強いのだ。(不必要に前係な位置取りは彼の評価を下げている気もするが。)反対にデヘアはキャッチ数、パンチング数の少なさから「安全第一」でプレーしている様子が読み取れる。深い位置で構え「コーナーキックになってもいいから確実にはじき出す」といったイメージだ。この違いは下記のHeat map(Squawka )からも見て取れる。(エバートン戦heat mapの比較:左ミニョレ、右デヘア)
【雑感】
数値を用いて比較すると「スタイルの違い」が「スタッツの違い」に表れて面白い。GKはそのポジション柄、スタイルの違いで語られることは少ないがFWやMFを語るように「こういうスタイルのGKが好みだ」といった主張がもっと増えてもよいのではないか。と思っている次第。
【データ論】プレミアリーグで消滅しつつある「ジャイアントキリング」~崩れたパワーバランスと下剋上~>>
>>9人の現役FWの得点ペース比較~ゴールネットを揺らすという仕事~