日本vsブラジルから読むコンパクトな守備の失敗例~「オスカル」の連続ポジションチェンジへの処方箋~

■処方箋:失点率を下げる3つの処方箋

ではいかにして前ページの失点シーンはいかにして対処することができたのか。少なくとも3つの方法がある。

(1)プレスをかけない(苦肉の策)
日本は左サイドで明らかな数的優位をつくられていたためここで中途半端に奪おうとしても突破されるの目に見えていた。さらにプレスをかけることで元々その選手がいた地点にはスペースが生まれてしまう。ここであえてプレスにいかないという策がある。2枚目の図を見て貰えれば分かる通り直接的には柴崎と田口がプレスをかけたことがスペースへの抜け出しにつながってしまった。2人がオスカルとタルデッリを放置して、さらにはそれを確認した最終ラインがラインを上げずに裏のスペースを消せば決定機は生み出されなかった可能性が高い。

vsブラジル2-1

(2)マークをスライドする
1枚目の図の段階で太田がウィリアンについていけば、田中、柴崎のマークがはっきりし突破を許すことはなかったはずだ。しかし太田はグスタボが気になりポジションを上げられずにいた。つまり上記を実行するにはグスタボのマークもはっきりさせなければならない。これは森岡がタルデッリの後方のスペースを埋め、田口がグスタボに集中できる形をつくることで解消される。(CBがグスタボについて田口はタルデッリ、森岡が背後のカバーリングという形も可)しかし実際には森岡が逆サイドでサボっていたがためにスライドは行われなかった。

vsブラジル1-1

(3)バイタルエリア手前を埋める
3枚目の図のタルデッリが抜け出した場面。実はここで森岡が突破を食い止めようとタルデッリを追随している。しかし元々いた位置が位置であっただけに間に合うはずもなく失点。この時逆サイドにいた彼がバイタルエリア手間を埋めていたら抜け出したタルデッリはフリーにならずCBも釣り出されずに済んだ。「(2)マークをスライドする」と共通するが森岡のポジション取りを改善することで一気に失点の可能性は減ったと断言できる。

vsブラジル3-1

以上がオスカルらが繰り返し仕掛けてきたポジションチェンジへの対応策である。

【雑感】
今回はアギーレ体制になって間もないとはいえ酷い内容での大敗だった。それも「個」でやられたのではなく組織をボロボロにされての0-4。しかしコスタリカもメキシコもW杯直前までチームは崩壊していた。いくらでも改善の余地はあるしアジアで常勝軍団になって勘違いするよりよっぽど良いのではないだろうか。目標はあくまで4年後なので粘り強くチームを作り上げてほしいところ。


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