“クラブはまちがいだらけの移籍に大金を払いつづけている。クラブが使った移籍金の額は、リーグ順位にほとんど反映されていない。私たちがイングランドの40クラブの支出を1978~1997年の20シーズンにわたって分析したところ、移籍に使った金額はリーグ順位のわずか16%としか相関関係がなかった。その1方で、年俸総額は実に順位の92%と相関があった。
1シーズンだけを取り上げれば、年俸総額と順位の相関関係は弱くなる。短い時間では、運が成績を左右する部分が大きいためだ。選手のけが、誤審、コンディショニングの失敗などが、順位には大きくものをいう。しかし長い年月にわたって調べれば、運の要素は消えていく。各クラブの成績を長い期間(たとえば20年)にわたって追っていくと、選手と年俸の相関関係は90%前後にまで高まる。
この分析を行ったあとも、年俸と順位の相関関係は小さくなる気配を見せていない。イングランドのプレミアリーグとチャンピオンシップのクラブ年俸総額を魅せ1998~2007年の10シーズンにわたって調べたところ、前回の分析とほぼ同じく、リーグ順位の89%と相関関係があった。どんなに話題を集める移籍よりも、高い年俸を払ったほうがクラブにはるかにプラスになるようだ。
選手の年俸の市場はじつに効率的である。いい選手ほど年俸は高い。だが移籍市場は非効率だ。たいていの場合、クラブは買うべきでない選手を買う。非効率な市場にはチャンスが転がっている。大半のクラブが移籍金をドブに捨てているのなら、金を賢く使うクラブは強くなれる。たとえばノッティンガム・フォレストを率いたブライアン・クラフと、その右腕であり心の友だったピーター・テイラーであり、アーセン・ベンゲルのアーセナルでの最初の10年間である。
最も奇妙な例はオリンピック・リヨンだ。地方の名もないチームだったのに、いつのまにかフランスサッカーを完全に支配するようになった。2002-2002シーズンからフランスリーグ7連覇を果たしている。サッカーで勝つには高いサラリーを払えばいいのだが、これらのクラブはべつの方法をとった。移籍市場をかつ抜く極意を見つけたのである”
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