U21欧州選手権はスターを夢見る若手選手が世界に名を売る絶好の機会だ。2012年の11月、同大会予選にフランス代表として招集されたアントワン・グリーズマンもそこで注目を集めた1人である。しかし彼が有名になったのはサッカー以外での”事”だった。
まだ当時21歳だったグリーズマンは何を思ったのか本大会出場のかかった予選が行われている最中にヤン・エムビラ、クリス・マンヴンガらと宿を抜け出し200km離れたパリへ夜遊びへ出かけてしまったのだ。その影響もあってかチームは予選敗退。さらにこの夜遊び問題はフランスサッカー連盟により重く受け止められ、グリーズマンは先1年間全てのカテゴリーの代表戦出場禁止を命じられてしまう。
その問題児が今季(1415)レアル・ソシエダで先発31試合16得点という数字を残し、実力で世界を驚かせた。しかし、その得点力もさることながら、彼の凄みは高いユーティリティ性にある。元々ドリブラーとしてプロの世界に連れて来られた青年は、トップチームで過ごした5年の間(176試合出場)に複数のポテンシャルに磨きをかけ、”引き出しの多い”アタッカーに成長を遂げたのだ。その特性はスタッツにも反映されており、34回のチャンスを創り出している一方で16ゴールを決め、そのうちの31%をヘディング、19%をエリア外から決めている。さらに最も得意とする左サイドハーフに加え求められればセンターFWでも質の高いプレーが可能。
また、元々ドリブルが得意であったと上述したが、現在の彼はベイルのように独力に頼るタイプとは異なる。この若きフランス人FWの”引き出し”の根本は巧みなワンタッチプレー、キレのある動きだし、瞬発力を生かした仕掛けの組み合わせだ。故に連携の中でより輝きを放つタイプである。監督目線としてはチームの戦術にはめ込みやすい選手と言えるだろう。
(元データ:ベイル、グリーズマン)
ここまでポジティブな点ばかりだが、まだ23歳になったばかりのグリーズマンは良い言い方をすれば伸び代、別の言い方をすれば課題も抱えている。最も気になる点はドリブル成功率38%、パス成功率77%(Squawka参照)という数字からも分かる通りボールロストが少なくないことだ。彼の場合毎試合奪われる回数が多い訳ではなく、試合ごとの波が上記の問題を引き起こしている。世界で指折りの選手になるなためにはもう一皮剥けて、安定感を手にする必要があるかもしれない。
ただ、より多く勝つためには1人が複数のポジションをこなし、緻密な戦術を組み立てることが必要な現代サッカーにおいて彼のような選手は重宝される。さらにこのフランス代表はまだ成長の余白を残した23歳だ。上記の懸念点とソシエダとの2016年までの契約を勘案しても欧州各国の名門クラブが放っておくことはまずないだろう。時折見せるダイナミックなプレーと整った顔立ちも一役買って夏のマーケットでは話題を集める1人になることは間違いない。
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