日本vsブラジルから読むコンパクトな守備の失敗例~「オスカル」の連続ポジションチェンジへの処方箋~

■現実:ブラジルの連続ポジションチェンジと個のレベルが違ったカナリア達

アギーレ体制になってから日が浅く、スタメンを6人入れ替えたという点での言い訳を一切無視して話すと「中央をコンパクトに固める」という守り方自体機能していなかったことは非常に残念であった。どのタイミングでどこに追い込み、危険なスペースは余っている選手が埋めるなどの連動がチーム内で発揮されていなかったのだ。もちろん序盤は上手く囲い込んで攻撃に繋げている場面もあったが「ある時間帯は上手くできた」では意味がない。サッカーは90分である。

~ブラジルの連続ポジションチェンジでズタボロに~
ネイマール、オスカル、グスタボらは開始早々から上下に動き回りいとも簡単に日本を「後手」に回した。特にオスカルは日本にとって厄介だったに違いない。簡潔に記すと、彼らが深くまで引いたり上がったりを繰り返すことで日本側のマークはことごとく曖昧になってしまったのである。相手がポジションを入れ替えてきた時の対処法について全く話し合われていなかったのではないかと思う程に。日本はそれでも懸命にプレスをかけて自由を奪おうとはしたがその程度でカナリアの足元は狂わない。むしろ中途半端なプレスを利用され攻撃を組み立てられてしまった。その象徴が前半17分のブラジルの先制点。

~ブラジルの先制点~
最前線を漂っていたと思ったら前半途中から最終ラインの組み立てに加わり出すオスカル。近くにいた柴崎はスペースに走り込んむグスタボへのパスコース消しを優先しプレスに行けない。じりじりとドリブルで前進するオスカル。その背後に引いてくるウィリアン。守備をやっているのに何故か相手選手に挟まれた日本勢はどっちつかずの立ち位置に。この時点で数的優位で守備をしたいはずの日本がブラジルに数的優位を作られている。

vsブラジル1

田中はダニーロとウィリアン、柴崎はウィリアンとオスカルとグスタボへのコース消し、田口はグスタボとタルデッリ。5vs3の局面をつくられそれぞれが2人以上をマーク見ているカオスな状態に。この間にブラジルトライアングルは優雅にパス交換を行う。さらにここにタルデッリが加わる。

vsブラジル2

柴崎が恐る恐るオスカルに近づいていく。タルデッリは同じタイミングで引いてきて後ろ向きでボールを受ける。田口はグスタボが気になり一瞬遅れたがここはプレスをかけるゾーン、前を向かせずサイドに追い込まなくては。彼はそう考えたのかもしれない。後ろ向きのタルデッリに決死のプレスをかける。こうして田口とタルデッリのいた地点に広大なスペースが生まれた。この時最終ラインは「コンパクトな守備をしなくては」と言わんばかりにじりじりとラインを上げようとする。「密集地帯でプレスをかけ相手の自由を奪えばスルーパスは出てこない。」のである。確かにそういうことなら裏をケアする必要はなく選手間の距離を縮めた方が良い。しかし数的不利な上に中途半端なプレス。最高レベルの技術を持ったカナリア達。彼らは「自由」以外の何物でもなかった。タルデッリはウィリアンとの鮮やかなワンツーから抜け出しフリーでがら空きのスペースへ。

vsブラジル3

さらに皮肉なことに日本が作りたかった「密集地帯」で何本かのパスを回されたことで最終ラインの集中はボールに向けられていた。抜け出したタルデッリはすかさずCBの裏へスルーパス。この時点でネイマールはスピードに乗っているしDFは直前まで別の地点に集中を向けていた。当たり前のようにネイマールが突き刺す。

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