そう語りかけるのは監督や選手ではなく90分のスタッツだ。
確かに大まかな比較を見るとレッズは決して引けを取っていないように見える。パス成功率ではやチャンス数では上回っているし、その他の数値にも極端な落差はない。(via STATS ZONE)
レアルマドリ― | リヴァプール | |
ポゼッション | 54.30% | 45.70% |
シュート | 14本 | 12本 |
パス | 598本 | 499本 |
パス成功率 | 89% | 90% |
チャンス | 10回 | 11回 |
ドリブル(成功) | 18回 | 14回 |
ボール奪取 | 67回 | 59回 |
インターセプト | 19回 | 20回 |
しかしこれはあくまで表面的な数字であある。より詳細なデータを確認してみるとその「違い」と「差」が浮かび上がってくる。まずは両チームの「パス」を比較してみよう。
◆パス
下記の対比(via STATS ZONE)を見るとよくわかるが両チームが出すパスの種類は大きく異なっていた。リヴァプールは縦方向に短目のパスを、レアルは横方向へ長目のパスを基軸に組み立てを行った。
(前半の「横パス」比較)
(前半の「ロングパス」比較)
レアルマドリー | リヴァプール | ||
長さ | ショート | 92.20% | 95.30% |
ロング | 5.78% | 4.70% | |
方向 | 縦 | 47.10% | 53.10% |
横 | 26.10% | 19.40% | |
後ろ | 26.80% | 27.50% |
短めのパスで攻撃を組み立てたリヴァプールは最終的に前を向いたスターリングに左サイド深い位置でボールを渡し勝負させる形をつくりたかった。(実際につくっていた。)対するレアルマドリーは臨機応変に空いたスペースに選手が走りこむ策で攻撃を展開した。この攻め手の違いが結果としてどのような「差」を生んだかは「シュート」の数値が教えてくれる。
結論を先に述べるとリヴァプールの策には綻びが生じ、レアルの策は効果的に働いたのである。
◆シュート
下記は両チームのシュートの比較である。これだけを見ても両チームのシュートシーン、すなはち得点チャンスの質に差があったことは明確だ。
レアルマドリード | リヴァプール | |
全体 | 14本 | 12本 |
枠内 | 7本 | 2本 |
被ブロック | 2本 | 7本 |
エリア内 | 9本 | 4本 |
確かにリヴァプールは少なくない攻撃機会でシュートまで持ち込む場面が何度もあった。しかし、白シャツの守備陣を崩し切って放ったシュートは殆どなかったことを「エリア内でのシュート数」と「被ブロック数」が裏付けている。「前半の早い時間帯に点を取れなかったのが痛手だった。」と監督はコメントしたが実際はそれほど多くの決定機を作り出せたわけではなかったのだ。
ではこれらの「差」を生み出した要素は何か。一つに特定することはできないが筆者が注目したいのはCBの質である。
◆「差」を生み出したCB
結論から述べると攻守に完璧なプレーを見せたペペの存在感が試合を決める重要な要素となった。ロジャーズはペペを過小評価してこの試合に臨んでしまったのかもしれない。
前半のリヴァプールはスターリングをペペにぶつけて攻撃の最終局面に挑んだ。そして期待を一身に背負った若きアタッカーは意気揚々と得意の形で仕掛けを行った、しかし完敗。前半はシュート0本、エリア内へのパス0本、バイタルエリアでのドリブル成功1回に留まった。つまり、リヴァプールの良い時間帯は確かにあったがゴールを奪う前に経由する重要ポイントをぺぺに完封されてしまったのである。
さらにペペは先制点の直前の場面、タイミング良く攻撃に参加しジェラードのマークを一瞬ロナウドからずらすことに成功している。そしてそこからパスを受けたロナウドはリヴァプールのCB2人をぶっちぎって容易くゴールを奪って見せた。おまけとしてぺぺはその後セットプレーからアシストも決めた。
【雑感】
4年離れていた舞台から当たり前のように受けた洗礼。0-3完敗だ。ただ幸運にもルドゴレツがバーゼルを破ったことで「答え」はまだ自らの手中にある。その希望を勇気に変えてサンディアゴ・ベルナベウに乗り込もうではないか。