支配上手のアーセナルと、速攻向きのリヴァプール~ポゼッション率がもたらす勝ち点「差」とその背景~

アーセナルとリヴァプールに話を戻します。アーセナルには密集した地帯でもボールをキープできる選手が多く、また、チームとしてポゼッションをベースとした戦い方を20年近くも同じ監督が構築してきたこともあってボールを回しながら整った相手守備陣を崩す攻め方に長けています。

一方のリヴァプールはスペースに飛び出して勝負を決める選手や、ボールを奪取したその勢いで一本のキーパスを狙える選手を攻撃の中心に据えているため、ゆっくりとしたパス回しから効率よく点を取れるチームではありません。おまけにボールを支配して全体を押し上げた時に期待される2列目の得点力も不足しているます。故に、相手の守備陣が整う前にキレのある数人のアタッカーで攻撃を完結させるスタイルの方が結果が出やすいかもしれません。前半戦3得点以上を取ったトットナム戦とスウォンジー戦の支配率がそれぞれ43%、49%であったことがその特徴をよく表しています。

続いて「守備」に目を向けるとアーセナルはポゼッション率が55%を超えると平均失点数が-0.82点。また、クリーンシート試合の平均ポゼッションは58%と高水準です。「ポゼッションをすることで相手に攻撃をさせない」という論調がよくありますが、彼らはまさにこれを体現しています。一方のリヴァプールは下記図からも分かる通りポゼッション率が高まるからといって失点数が減るわけではないようです。

【散布図】リヴァプールのポゼッション×失点数

寧ろクリーンシート試合の平均ポゼッションは50.6%と全体平均(52.7%)よりも低い値になっています。攻撃大好きロジャーズ率いるリヴァプールはチームが前がかりになった時、後方の役割分担が不明瞭なため隙を突かれやすく、おまけに最終ラインの個人ミスが多いため突発的な攻撃を受けるとピンチを招きやすいということが原因だと考えられます。

最後に先日行われたアーセナルvsマンチェスター・シティの一戦。アーセナルは相手の攻撃を読み切ったうえで、サンチェス、ジルー、カソルラらを中心としたカウンター攻撃でシティを刺しました。この2-0の勝利を冒頭の図に入れ込むとこんな風になります。左上の赤い点です。

【散布図】アーセナルのポゼッション率×得失点差

どう見ても異端な点です。ベンゲルが相手を見切り、完璧な戦術をはめ込んだ結果と言えるでしょう。リーグ後半戦、サンチェスという切れ味鋭いスパイスをふんだんにに使って完成させたこのスタイルが対戦相手を苦しめることになりそうです。

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