支配上手のアーセナルと、速攻向きのリヴァプール~ポゼッション率がもたらす勝ち点「差」とその背景~

「ポゼッション」。その言葉の定義は一つでも勝利とポゼッション率の関係性はチームごとに異なります。別の言い方をするとボールを支配することが勝利をもたらしているチームもあれば、そうではないチームもあるのです。本記事ではアーセナルとリヴァプールを比較してみます。下記の図をご覧ください。

【散布図】リヴァプールとアーセナルのポゼッション×得失点差

これは「アーセナルはボールを持てば持つほど1試合当たりの得失点がプラスどなる傾向にあるが、リヴァプールは異なる。」ことを示す図です。1415シーズン前半戦19試合の1試合ごとのポゼッション率と得失点差を比較しています。(青:アーセナル、オレンジ:リヴァプール)

青い点はポゼッション率が高いと得失点差も高い位置にありますが、オレンジの点は寧ろその逆の傾向にすら見て取れます。ポゼッション率55%を基準にすると、アーセナルはこの点を超えると平均得失点が+0.89点するのに対してリヴァプールは-0.95点とマイナスに動きます。つまりアーセナルはポゼッション率を勝ち点に変えるのが比較的得意なチーム、リヴァプールは苦手なチームです。

PROP141221-017-Liverpool_Arsenal-1194x840

ではなぜこのような差が生じるのでしょうか。まずは「攻撃」を考えてみましょう。ボールを長い間保持しつつ攻撃するということは、守りに入った相手にも同じだけのを与えるということです。つまり、ただゆったりとボール回しをしているだけでは相手の守備陣は崩れるどころか安定した陣形を構えてしまいます。

そこで必要となるのが前線の動き出しです。例えばW杯準々決勝のドイツvsフランス。序盤ドイツはボールを支配しながら責め立てセットプレーからゴールを奪いましたが、その間にミュラーとクローゼの動き出しから相手の整った守備陣を鋭く突くシーンがありました。

【図解】ミュラーの受ける動き

最終ラインでのボール回しからラームにパスが入った瞬間、クローゼとミュラーが同一方向のスペースへ走りこむ素振りを見せたかと思いきやミュラーが急停止。ラームからの完璧なタイミングのパスを受けて反転しエリア内まで侵入しました。

これは一例にすぎませんが、このように的確なパスを供給する出し手と、そのスピードを殺すことなく狭いスペースでボールを操れる受け手が呼吸を合わせてスイッチを入れることでポゼッションをしながらの守備崩しが成立するのです。

【後半】”リヴァプールの勝ちスタイルと、完成したアーセナルのカウンター”