フィルミーノのプレスバックを考察-なぜレスターはリヴァプールに封じられたのか-

終始機能していたレッズ陣によるボールホルダーの囲い込みがレスターの攻撃を抑えこんだ最たる理由だが、筆者はフィルミーノの的確なプレスバックが鍵となっていたと考える。ベンテケへのアシストを決めるまで攻守ともに目立つプレーが少なかった11番だが、試合を見返すと彼のプレスバックがレスター陣の選択肢を狭めていたことがよくわかる。

リヴァプールは前半30分までに少なくとも8回、フィルミーノのプレスバック絡みで中盤でのボール奪取に成功している。中でも特筆すべきシーンを下記に2つ紹介する。

ひとつ目は前半3分の場面。

レスターVSフィルミーノ1

試合開始直後ということもあり、クロップからの指示を的確に実行したのだろう。ロングボールが蹴られると最前線から自陣に戻り、パスコースを狭めながら背後からプレス。残念ながらこの後ファールの判定を受けたが、確実にレスターの攻撃の芽をつんでいる。

二つ目は前半19分のシーン。

レスターVSフィルミーノ2

 

こちらも内側へのコースをけしつつプレスバックをかけ、逆サイドへの展開を阻止。狙い通りボールを奪い取っている。

クロップのサッカーは相手のボールホルダーに対して人数を裂き、ボールを取り切ることが前提とし組み立てられている。故に同監督の初陣(スパーズ戦)で見られたように、各選手がプレッシャーをかけるタイミングを図り間違えると瞬く間にその包囲網は崩壊し、手薄なスペースを手渡すことになる。レスター戦で招いたピンチはセットプレーからのリスタートか個人のミス絡みであり、プレッシャーを突破されることはほとんどなかった。その影の立役者となっていたのがフィルミーノであったというのが筆者の考察である。

上記の結果、レスター陣は中盤で余裕を持ってパスを通すことが困難となり、エリア内へのパスは数えるほどしか通らず、際立った好機をつくれずに試合を終えることとなった。ちなみに、プレッシャーがより機能していた前半、レスターがエリア内に通したパスはわずか1本である。

攻撃面ではまだまだ才能を見せ切れていない印象のフィルミーノだが、上述のような的確な位置取りができる彼をクロップは重宝するに違いない。「点を取るだけのFWは必要ない」と言及した監督の元で適応し始めたブラジルのテクニシャンの今後に期待したい。