フィルミーノのプレスバックを考察-なぜレスターはリヴァプールに封じられたのか-

Xmas前の3連戦、ニューカッスル、ワトフォード、ウエストブロムに勝ち点をプレゼントし浮上の機会を逃したリヴァプールは、いつも通り「格上」のレスターには何も分け与えずあっさりと完封試合をやってのけた。

クリスタルパレスに破れてもチェルシー、シティ、アーセナル、トットナムから4試合で8ポイントを獲得する、それがリヴァプールFCなのである。

この謎を解き明かすのはまた次回の課題とし、本記事では「リヴァプールがレスターを封じた試合の多角的考察」をテーマとする。

レスターは直前の3試合で平均2.7得点、シュート11.7本、エリア内からのシュート7.3本決定機2.0回と得意のカウンターから数多くの攻撃を仕掛けそれをものにした。一方リヴァプール戦の同スタッツは得点0、シュート7本、エリア内からのシュート5本、決定機0回である。各試合ごとに比較をしても、これらの中で他3試合のいずれかを上回るスタッツはない。試合を見ればお分かりのように、レスターの攻撃はこの日「不発」に終わった。あまり効果的には作用しなかったが、ラリエニが試合の早い段階で2トップにテコ入れをしたのも頷ける。

では、なぜレスターは持ち前の攻撃力を発揮できなかったのか。下記にレスターの過去4試合のパス成功数を比較している。

レスターパス(数)

リヴァプール戦、まずエリア内、ミドルサードで通したパス数が少なく、クリア数が他試合と比較して多い。では次にパーセンテージで同数値を見てみる。

 

レスターパス(%)

ミドルサードへのパスに注目すると成功率が極端に低いわけではない。すなはち、ミスパスが多くミドルサードでのパス数が少ないのではなく、同エリアでパスを通す機会自体が少なかったという仮説が立つ。

次にロングボールの成功率。他3試合と比較し低い値となっている。上述のクリア数が多いことを考えても長いボールを蹴らざるを得なかったのではないかと考えられる。リヴァプールは空中戦の両CBとボランチは比較的空中戦に強く、背丈で戦うタイプではないヴァーディと岡崎相手なら分があると踏んだろう。クロップはオリギの裏、ベンテケの頭上へボールを蹴り込むサッカーで試合に挑んだ。それによりカウンターを得意とするレスター攻撃陣に中盤でボールを奪われるリスクを防ぎ、CBとMFの間隔を間延びさせることで長いボールを蹴らせることに成功した。

ただ、レスターはボールを奪うや否や、個人技、もしくはヴァーディらの一瞬の飛び出しから好機をつくることで得点を重ね、プレミアリーグで首位に立っているチームである。ロングボールを多用されただけで身動きが取れなくなるほど単純ではない。

実際にこぼれ球を拾い攻撃に向かおうとするシーンは前半から多数見られた。それでもミドルサードで10分に6本のパスしか通せなかった理由は他にもある。

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