クロップ率いるリヴァプールではアダム・ララーナを自由に動き回る「フリーマン」の立ち位置でプレーさせることがある。
Congratulations to the Premier League PFA Fans’ Player of the Month, @LFC midfielder Adam Lallana! #POTM pic.twitter.com/l2aQcFDtpK
— PFA (@PFA) 2016年4月1日
相手を背負いながらのプレーや、対峙するDFをドリブルで抜き去ることは得意としないが、動きながらでもボールを自在に扱うことができる英国人らしからぬスタイルの彼にフリーマンは適役である。1-1の好試合となったリヴァプールvsトットナムでもその動きが見られたが、本記事では特にララーナが輝いた3-0でリヴァプールが勝利したマンチェスター・シティ戦を題材とし、彼の貢献を考察する。
15/16シーズン第28節のシティ戦。シティはヤヤ・トゥーレを休ませ、フェルナドとフェルナンジーニョの2センターで臨んだ。この2人が並ぶと「ヤヤのカバー」という意識が薄れるからか、どちらかがCB前のスペースを埋めるのではなく、2人も「人に付く」傾向が強くなるようだ。この点については後ほどの考察で触れる。
リヴァプールは前半から激しいプレスを見せ1年前まではメルウッドでトレーニングをしていたスターリングに対して地元っ子のフラナガンが執拗にタックルをかます展開に盛り上がるスタジアム。その反対サイドで不気味に漂うのがこの日鍵となったララーナ。
ララーナは左サイド中心でプレーをしていたものの、上下左右に攻守で走り、時に動きを留めてシティ選手の間にポジショニングするため、シティは常にマークを受け渡しながら彼の動きをケアしていた。下記が彼の前半のヒートマップだが、ひとつの位置に留まらずプレーしていたことがよく伺える。(参照:Squawaka)
ララーナが上述の位置取りから、周囲にシティの選手がたくさんいるが誰が見ているのか曖昧な状態が頻発していたが、その代表例である先制点のシーンを切り出してみる。
<シティ戦 1ゴール目>
①ララーナが左ワイドでボールを受け、逆サイドに展開。その後すぐに、バイタル手前のエリアまで走りこむ。
②ボールはヘンダーソンのリターンによりクラインへ。ララーナはナバスとフェルナンジーニョの間に漂う。スピードのあるオリギが裏を狙う姿勢を取り続けることで、シティDF陣は前に出てこれない。
③ナバスがクライアンの対応にでたためマークを受け渡し、フェルナンジーニョとコラロフがララーナを見る。
④ボールは逆サイドへ展開。ララーナは動きを止め、フェルナンジーニョの背後に漂う。フェルナンジーニョからすると、DF陣によってマークされているかのように見えるが、コンパニとコラロフはオリギがいるため動けず。また、手前に広大なスペースが広がるが、まだここは使わず後のプレーエリアとして空けておく。
⑤アグエロが殆ど守備に参加しないため、シルバがひとつ前に引き出され、それに伴ってフェルナンジーニョがひとつ前へスライド。この時点でララーナ周辺にはシティ選手が複数人いるようで誰もアプローチに行けない状態ができあがる。
アグエロの守備不参加がプラン内だとしたら、ララーナを誰が見るのかはっきりしないまま、フェルナンジーニョが不用意にポジションを上げてスペースではなく人に行ってしまったのはミスである。CBの指示ミスの可能性もあるが、ナバスを絞らせるかフェルナンジーニョを留めさせる必要があった。
⑥ララーナが、開けておいたスペースへ顔を出しボールを受ける。この時、シティは左サイドで密集をつくりボールを奪いに行っていたため、本来であればボールを取り切るかプレーを切る必要があった。ただ、プレスの甘さ、この後ララーナがフリーでボールを受けた際の慌て方を見ると、パスが通ってしまったこと自体よりも、エリア手間のスペースをララーナにフリーで使われたことが誤算であった可能性が高い。
⑦フリーでドリブルを開始。ナバスは逆サイドのクラインにつき、コンパ二とコラロフはオリギが留めているためララーナは自由の身。左足を振りぬき、先制。
どの位置でもテクニカルなボールタッチができる上に、献身的に走り回ることを厭わないララーナのフリーマンとしての的確な動きが、緩慢なシティの守備網を切り裂いた。
次頁ではララーナがの正確なポジショニングと周りとの見事な連携から生まれた2得点目を考察する。