エムレ・ジャンのプレースタイル~便利屋からリバプールの支柱へ~

エムレ・ジャンはトルコ人の両親を持つフランクフルト生まれのドイツ代表。6歳に地元のSV Blau-Gelb でサッカーを始め、12歳でドイツ1部に所属するアイントラハト・フランクフルトのアカデミーに加入した。その3年後にバイエルン・ミュンヘンとサイン。

バイエルンではチームBで31試合に出場したもののファーストチーム定着には至らず、2013年に買い戻しオプション付きでレバークーゼンに移籍し29試合3得点を記録。その翌年、£9.75mの移籍金でリバプールに引き抜かれた。

エムレ・ジャンは大柄な体格を生かしたボール奪取とドリブルに強みを持ち、ミッドフィルダーでのプレーを好む。しかし、リバプール移籍当初、ボランチで起用されると不用意にポジションを上げてしまう場面や、散らしが上手くいかず攻撃が停滞する局面が散見された。それもあってか、暫くはディフェンダーとして起用され続ける時期が続く。

他メンバーの離脱によって前線で先発することもあったが、ロジャーズが複数のポジションでプレーできる彼をあくまで「便利屋」として起用していたことは否めない。

上述の立ち位置からクロップ就任後、中盤で確固たる地位を掴む。ダイナミズムを持ち味とするジェラードやヘンダーソン、ミルナーとの共存が必要な中、この1年で自らのプレースタイルの幅を広げてきたのは見事である。現在は、低い位置取りからの落ち着いた組み立てや、的確なロングフィードで攻撃面でチームの支柱となっている。

1415シーズンは複数のポジションで起用されていたため単純な比較は難しいが、同シーズンから1516シーズンにかけて、パス成功数45.7本/試合→59.5本/試合、キーパス本数0.4本/試合→1.1本/試合とスタッツは顕著に上昇。

参照:https://www.whoscored.com/Players/111212/History/Emre-Can

守備面では不用意なファールが多い点は改善の余地があるが、体格を生かした安定感のある競り合いや、多少無理の効くリカバリー能力はクロップ陣の果敢なプレッシングを影で支える。

ヨーロッパリーグのビジャレアル戦2nd legでは、全治1〜1.5ヶ月と言われている中、3週間1日も休まずリハビリに専念して奇跡の復帰を遂げるとMOM級の活躍で中盤の底から逆転での決勝進出の立役者となった。この試合では、動き回るミルナーが空けるスペースをカバーする守備的ミッドフィルダーとしての役割をほぼ完璧にこなした。

「リバプールは世界一のクラブである」と自国ドイツのインタビューで答えるエムレ・ジャン。彼が愛するチームでこれから何を成し遂げてくれるのか、実に楽しみである。