【クロップ戦術】リバプールVSチェルシー考察~ジョエル・マティプはレッズにCLを齎すか~

監督就任からスタンフォードブリッジで2試合続けてチェルシーを破った2人目の監督になったユルゲン・クロップ。リバプールが2点先制し、クロップの思い通りに進んだ印象を受ける展開ではあったが実際は「紙一重」な試合であったというのが筆者の見解だ。そんな試合で勝ち点3を得られたのは、新加入のカメルーン代表の力が大きい。

開始早々から、リバプールはララーナを中心とした前線からのチェイスと、ヘンダーソン、ワイナルドゥムらの適切なコース消しにより巧みにチェルシー陣にプレッシャーをかけていく。ララーナのファーストチェイスはカンテの小気味よい反転でかわされることが多々あったが、チーム全体が細やかに連動して圧力をかけていくことで、確実にチェルシーDFラインを苦しめていた。前半、ダヴィド・ルイスとケーヒルのパス成功率が88%とCBとしては無視できない低さであったことと、前半25分まではチェルシーが一度も好機を創り出せなかったことがその裏返しだ。(参照データ:STAS ZONE)

一方のリバプールは、試合を支配しながらも、マネの独力での突破をアスピリクエタに消されたことと、エリア内で決定的な仕事ができる好調なフィルミーノの欠場が影響し、流れの中からの決定機は創り出せず。そんな中、稀に見る緩慢なセットプレー対応と、ヘンダーソンのシーズンベスト候補になるであろうミドルで2点を先制できたのは幸運であったと言える。もちろん、1点目はイバノビッチの不用意なファールから、2点目はダヴィド・ルイスの消極的なクリアからはじまっているので、試合開始からエネルギーを投下してチェルシーDFを追い詰めた結果であることには違いないが。

ただ、リバプールの足が止まる前半35分以降、チェルシーは徐々に試合をコントロールし、好機を立て続けに創っていく。リバプールが中盤をコンパクトに保ち走力を武器にプレッシャーをかけてくることがわかっていたコンテは、試合開始から一貫してピッチを縦横に広く使う策を取る。狙いは、プレスを掻い潜り攻撃に転じること、時間とともにリバプールの前線を消耗させることである。実際、通常であれば低いエリアまで降りてきて組み立てに顔を出すジエゴ・コスタはほぼリバプールの最終ラインに張り付いて奥行きを保ち、また、スタッツを見ても、両サイドからのクロスが合計28本、両サイドでのボールタッチの数が41.3%と、チェルシーの過去4試合と比較しても意識的に深さと幅を使おうとしていたことが伺える。(参照:Squawaka)

ただ、コンテの誤算は2つ。

ひとつめは前半35分頃まではリバプールのプレスを掻い潜り、逆サイドのスペースへ展開することがぼぼできなかったこと。ララーナの執拗なプレスに苦しめられただけではなく、一枚交わしても二枚目がプレスの確度が工夫されていたため、同サイドでのプレーを選択せざるを得なかった。確かに、チェルシーは頻繁にサイドチェンジを行ってはいたが、あくまでリバプール陣が一度自陣に撤退した場面に限られていた。故に、中期的にリバプール陣を走らせることには成功したものの、「プレスを掻い潜って好機を生み出す」シーンは皆無であった。

それでも、広く深くピッチを使う戦い方はリバプールを消耗させ、試合全体でのチャンス数はチェルシーの方が上回っていた。チェルシーが勝ち点を持ち帰れる可能性も十分にあったが、コンテが苦渋を飲むことになったのは、以下に述べる二つ目の誤算が強く関係しているというのが筆者の考察である。

全くと言って良いほど、ジエゴ・コスタにボールが収まらない。ジョエル・マティプがほぼ完璧なプレーを見せ、ジエゴ・コスタに入る縦パスとハイボールを幾度となく跳ね返した。コンテがジエゴ・コスタに深い位置を取らせたのは、彼一枚でそのエリアの起点となれると見込んでいたからだが、クロップがフリーでつれてきたカメルーン代表はコンテのプランを狂わせた。

マティプの躍動が、リバプールにスタンフォードブリッジでの勝ち点3を齎したと言っても決して大げさではない。

長らく、不安要素として上げられていたリバプールのCB。この夏ジョエル・マティプが加入したことによりこの問題は一気に解決に向かいそうだ。今シーズン、彼がシーズンを通してプレーできるようなら、クロップは2年目にしてCL圏内フィニッシュを狙えるだろう。