◼︎サイドでの起点作り
後半のリバプールのクロスの数は前半の3本に対して18本。クロップが試合後の会見でも話していたが、ハーフタイムに出した「ワイドな攻撃をしよう」という指示が明確に実行されている。後半からオリギをサイドに配置。オリギは左側のタッチ側を主戦場として、極端にワイドな位置取りをした。愚直に監督の考えを再現しようとする姿勢がクロップがオリギを評価する理由の一つであるに違いない。
<前半オリギが受け取ったパス>
<後半オリギが受け取ったパス>
Squawakaによるとフィルミーノもまた後半のボールタッチの40.38%は左サイドで行なっている。相手はリバプールの中央での組み立てを潰しにきていて、且つ、ウィリアムズに個人で勝つことは難しいという状況から、クロップは攻撃の拠点を左サイドに移したのだ。中央から突破できるのがベストだが、エバートンが真ん中に人を裂くのであれば手薄なサイドから攻撃するのは正攻法。正しい状況判断ができるミルナーがいるからこそこのプランBが成り立つ。STATS ZONEによるとミルナーのボールを受けた数は前半20回に比べて、後半は39回と顕著に増えている。ダイレクトプレー、ロングボール、シンプルな裁きを組み合わせて見事に組み立てをリードした。
対するエバートン、後半からの動きは前半のそれとは違っていた。具体的には前半30分以降、リバプール陣のポジションチェンジによって主導権を奪われかけていたためか、ヘンダーソンへのバークリーのマークが少々緩まっていた。クーマンはバークリーに対して「ヘンダーソンから自由を奪いつつも、他の選手とのポジションチェンジが行われた場合はバランスを考えて位置を取れ」という様な指示を出したのではないだろうか。流動的なリバプールの中盤に対してバークリーのプレッシャーには見るからに迷いが生じており、そんな中でも「ヘンダーソンから自由を奪う」というミッションを思い出してのレイトタックルだったのかもしれない。ヘンダーソンが無事でなによりである。
<後半の試合展開の図>
中盤での組み立てがある程度機能し始め、拠点をサイドに移したことでリバプールの攻撃は活性化。後半開始から立て続けに左サイドからエリア内に迫る。49分にはミルナーのロングパスからフィルミーノに決定機。52分にはクラバンとミルナーのパス交換からオリギに渡り一時は奪われるもミルナーが取り返しショートカウンターを成功させている。惜しくも得点には至らないが、攻撃時にミルナーとオリギが近い距離を取ることで、クロップらしい展開に持ち込む。
◼︎結末
惜しいシーンをたくさん作りながらついに試合が動いたのはアディショナルタイム。左サイドから右サイドに大きく振って「ワイド」な攻撃から得点が生まれ試合を締めくくった。勝ち越しの立役者となったのはスタリッジ。怪我が多く、献身性に欠けるなど戦術に組み込むのが難しい要素を持つ選手であるが、途中から出てきた時に彼ほど心強いストライカーはいない。マネがアフリカ杯でいなくなる1月、お願いだから怪我をしないで欲しい。
ロブレンがチームで最も多い89本のパスを出すこととなった奇妙なマージーサイドダービーで勝点3を持ち帰ることができたリバプール。スタリッジも良かったが、ハーフタイムに的確なリカバリーをしたクロップと、その実行ための重要な役割をあっさりと担って見せたミルナーを称えたい。「これまで数多くの偉大な選手を指導してきたが、ミルナーは100%ベスト5に入る。」クロップがそう断言する理由をピッチ上で示したミルナー。彼がシーズンを通してチームのキープレイヤーとなることは間違いない。