【W杯分析】ベルギーの逆転から読む「引いた相手の崩し方」

目次
(1) 前半:アルジェリアの思い通りの展開
(2) 後半:監督の早い判断が功をそうしバイタルにスペースが生まれる
(3) 総括:ベルギーが見せた「引いた相手を崩す3つの策」

前半:アルジェリアの思い通りの展開

試合は20分まで両チーム殆どチャンスがなく進行した。アルジェリアは前線に1人を残し後の9人がディフェンシブサードまで引き、ベルギーの攻撃陣6枚(中盤4枚+ルカク+SB1枚)をコンパクトに囲む形(下記図)。ルカクに対する縦パスは徹底的に前でカットを狙い、アザールに対しては常に2人以上がプレスをかけコースを狭め幾度となくボールを奪った。攻撃に転じた際には最終ラインでゆっくりパスを回し、タイミングを見てシンプルに裏を狙う。5人以下の人数で攻めるため奪われてもリスクは最小限で済む。

bl-al

対するベルギーは後ろを固める相手に苦戦。上述した通り、ルカクにボールを当てようにも複数人が狙っていて溜めを作れない。寧ろ彼がずるずる下がってきてしまっていたためより守られやすい形を取られてしまった。アザールはポジションを入れ替えながら個人技で突破を試みていたが2.3人をぶっちぎることはできず度々ボールを失う場面が見られた。引いた相手から点を取る手段としてセットプレー、早い段階でのクロスは有効だがルカクはヘディングの勝率は38%(プレミア1314)と空中戦に強い訳ではなく後ろにいるシャドリも同様。CBの攻撃参加の手もあるが初戦の試合序盤でまだ躊躇があるのかコンパニ、ファン・ブイテンの上りは見られず。そんな中でアルデルヴァイレルドが不用意に手を使いPKを献上。それをフェグリに沈められW杯で28年ぶりとなるゴールで先制される。

早々に逆転を目指す事となってしまったベルギー。ここまで殆ど無策であったが失点で固さが取れたようだ。CBがハーフェーラインまで押し上げて両サイドバックもより高い位置を取り、ヴィツェルが攻撃参加し始める。これで数による圧倒的不利を軽減し容易にパスを回すことが可能となった。31分には左サイドでアザールがキープし、CBを経由して人の少ない右サイドへ展開。シャドリが流れて空いたスペースでデブルイネがボールを受けエリア内に侵入した(下記図)。33分にもルカクのキープからサイドチェンジに成功しヴィツェルの惜しいミドルにつなげている。攻撃人数を増やすという単純な打ち手ではあるが前半終盤はその効果でベルギーがじわじわ押し込む展開へ。

myboard2

しかし蓋を空けてみればベルギーの放った9本のシュートの内8本はエリア外からで、スコアが動いたのはフェグリのPKのみ。ベルギーの立ち上がりが無策であったことは確かだが、徹底して後ろを固め攻撃では全くリスクを冒さないアルジェリアも流石であった。

【次項】後半・総括 “引いた相手を崩す「3つの策」”