24年ぶりのPL優勝を目指す9連勝中のリバプールはマンチェスター・シティ相手に前半を2-0で折り返した。しかし歴史を変える勝利が現実味を帯び始めると同時に、半ば勢いで補い続けてきた若いチームの脆さが露呈し出す。
今季のリバプール躍動を象徴する若手、ジョン・フラナガン。前半45分を及第点のパフォーマンスで終えた彼だが後半に入って急ブレーキを踏む。腰の引けたプレスと中途半端なマークの受け渡しでシティに自由を与え、誰もが想像していた形で崩され12分で1失点。それに吊られるかのように右サイドでもピタリと足が止まり6分後にOGで2失点目。「2-0は危険なスコア」という言い聞かせの正しさを証明するかのように、開始25分で2点を奪ったホームチームのスタジアムは沈黙に包まれる。
天国から地獄に落とされたリバプールとは対照的にペジェグリーニの交代はピタリと的中した。途中出場のミルナーは得点の起点になった後もシルバらと共にリズムを刻み、試合をひっくり返す機会を伺う。監督はそこに勝機を見出し怪我から復帰して1週間のエースを投入。シティは淡々と、そして冷酷に試合を殺しにかかる。
そんな中リバプールはスタリッジが負傷するアクシデント。代わりにアレンを投入するが守備では引き続き浮き足立ち、攻撃では焦りからか明らかなオフサイドに掛かり続ける。心なしかKOPの声援にも戸惑いが混じる。
試合展開、リバプールの後半得点率、純粋な戦力…後半30分を過ぎシティが勝点1以上どころか勝点3を持ち帰れない理由はピッチ上に殆ど見当たらなかった。
が事は起きた。
コンパニのありえないクリアミスを拾った、決してシュートの上手くないコウチーニョが全身を捻じりながらゴール右隅に叩き込む。後半33分に再びリードしたホームチームは、その後のフラナガンのプレーに代表されるように自信と安定を取り戻しそのまま試合を終わらせた。勝点3を掴み取ったのだ。
この”思わず涙が零れてしまう”勝利を奇跡という一言で片付けたくはない。0405シーズンのCL決勝で0-3から大逆転で優勝を果たしたイスタンブールの夜も、決して偶然ではなく起こるべくして起きたのだ。前半終了時に歯を見せて笑うミランの選手の緩み、早い時間に1点を返しチームを鼓舞するキャプテン、PK戦前GKデュデクに対して「こんなチャンスはもう来ない。やれることは全てやれ!」と声をかけたキャラガー…事を成し遂げる為に出した全てがビッグイヤーに繋がっている。
今季のリバプールでは、CL優勝後、選手人生をリバプールに捧ぐ決断をしたジェラードが説得したスアレスが大爆発し、その2人の間ではベニテスが連れてきたスターリングがとてつもない早さで成長。前線ではキャロルの失敗を機にシティから引き抜いたスカウト陣が連れてきたコウチーニョとスタリッジが躍動し、後ろからチームを支えるのはケニーが抜擢した、あるいは辛抱強く使い続けたフラナガンとヘンダーソン。etc...
シティ戦の勝利と現在の順位表は決して奇跡ではなく、失敗も含めチームが低迷期の中で積み重ねてきた一つ一つの決断が創り上げた結果なのだ。
今季一つの壮大な物語が完成されることはあるのだろうか。残り4つの”カップファイナル”を残し話の結末は他の誰でもなく、チームの監督、選手、フロント、サポーター、そしてその景色を世界で最も眺めたい本人が握りしめている。
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