続いて9位以下のグループ間の差です。こちらも緩やかにですが勝ち点差が縮まっています。その要因としていわゆる「弱い」と言われるチームの実力が底上げされ、中間層のチームが増加したことが考えられます。
では、なぜこのような現象が起きたのでしょうか?考えられる理由はただ一つ、皆さんもお察しの通り「お金」です。「Deloitte report」によると1996年時点で欧州リーグ間の収益はプレミアの€689mに対してイタリア€551m、スペイン€524m、ドイツ€444mと格差はそれほどでもありませんでした。しかし、2010年にはイングランドの収益€2515mに対して、他3国は€1553m、€1718m、€1820mとドイツ以外はその差を大幅に広げられています。プレミアリーグはEU国籍選手の移籍が極めてしやすくなったボスマン判決のタイミングと重ねて、視座を世界規模にまで高めたメディア戦略と外資の呼び込みを成功させ莫大な富を築いたのです。
その収益の半分はすべてのチームに平等分配されるため、2015年春に最下位で降格が決まるチームでさえ£60m以上を確実に手に入れることができます。こうした施策の結果、プレミアリーグに所属しているだけで他国リーグのクラブと比べて財政的に潤う状況が完成。スウォンジーが£12mでボニーを獲得したり、カーディフがコーネリウスとメデルに£20mを費やしたりすることが可能になりました。ある一定以上の戦力が集まれば戦い方次第では下剋上も夢ではありません。高額で獲得したロブレンやワニャマらと育ててきた選手が絶妙に絡んだサウサンプトンはプレミア復帰2シーズン目で8位と躍進しました。こうしてプレミアリーグにパワーバランスが不安定な時代が訪れたのです。
今シーズンに限ると9位~12位グループが上位2グループとの勝ち点差を縮めています。前半戦が終わってトップ7にサウサンプトンとウエストハムがいることからも、中間層の一部が上位層へ入り込みつつあることが伺えます。
<結論>
プレミアリーグにはリーグ内格差縮小の流れ。なんらかの事情でプレミアリーグへの資金が途絶えたり、放映権分配のルールが変わったりしない限りこの傾向は今後も続くはずです。ウエストハムやスウォンジーが世界的なブランド力を持つようになるとは考えづらいですが、賢く戦えば上位陣に組み込めるだけの資金を手にした中堅チームのうちのいくつかが、これからも毎年のように「ダークホース」として巨大クラブを苦しめることでしょう。