ロンドンで勝点を袋いっぱいに詰めてアンフィールドへ帰ってきたクロップ陣営。強豪チームに勝った後、昇格組にホームで負ける姿がよく見受けられるレッズに対する疑念と、今年はやってくれるのではないかという期待が相まみえる中でのハル戦であったが、蓋をあけるとレッズが5-1で勝利。リバプールファンにとっては良い意味で期待を裏切る展開、圧勝である。
ハル戦でよかったのは、勝点3を獲得できたこと気分が良いことだけでない。試合を通して以下に述べる2つの良い兆しが見られた。
一つ目は、引いた相手を「崩して」得点できたことだ。以前記事にしたが、リバプールはポゼッションを高めても勝点に繋げられないチームであった。スアレスが抜けてからというもの、相手に引かれてしまうと突破できる術を失っていたのである。
そんな中、ハル戦ではマネ、ララーナ、コウチーニョの個人技とコンビネーションが冴え得点を奪うことに成功する。1点目と3点目はどっしりと構えた相手を崩した形での得点であった。
コウチーニョは試合によってパフォーマンスにムラがあるが、今季加入したマネと、試合ごとに動きに磨きがかかるララーナは安定感があり、怪我さえなければ他の試合でも同様の働きを見せらる可能背が高い。長らく悩みの種となっていた、引いた相手を崩す強力な術が今は少なくとも2つ存在する。
二つ目はカウンタープレス(ゲーゲンプレス)が極めて上手く行ったこと。クロップは試合後のインタビューで「前半はカウンタープレスがこれまでで一番上手く行った」と強調をしていた。ポゼッション74%だったのにも関わらず、カウンタープレスを褒めていたところが興味深い。
確かに試合を見直すと、ボールを奪われた次のシーンには相手のボールホルダーをリバプール陣が囲い込んでいる局面が多々見られた。そこでボールを奪い切って再度攻撃に転じるか、アバウトなボールを蹴らせてクラバンが跳ね返すかどちらかに終始することが殆どで、数的不利な逆サイドを使った逆襲を受けることは皆無。カウンタープレスは組織的に動けないと守備が崩壊するリスクのある戦術だが、そのリスクを最小限に抑えて45分戦い続けられたのは大きな収穫である。
また、カウンタープレスから直接ゴールが生まれた訳ではないが、「ポゼッションで圧倒しながらカウンタープレスを完璧にキメる」試合運びをすればクロップの口から「ベストゲーム」というの言葉が飛び出しても驚きはない。クラバンの対応含めて、クロップの仕込みが着実に芽を出し始めた。
強いて言うのであれば、カウンタープレスでボールを奪った後のショートカウンターの精度と速度。特にワイナルドゥムがボールを奪った際にやや消極的な選択をしている場面が散見された。相手が守備陣営を整える間も無く素早く攻撃に転じてこそ、カウンタープレスが価値を発揮するはずだ。彼は徐々にチームにフィットしてきているので、さらなる向上を期待したい。
前述の通り、これまで課題であった引いた相手との戦い方において、明確な答えを示すことに成功したクロップ。シーズンを通してさらに磨きがかかるであろうレッズの躍進に期待したい。