世界中のチームが欲しがるユルゲン・クロップを監督に迎えたリヴァプール。初戦のスパーズ線で見せた脆くもその泥臭い戦いぶりは新たな時代の幕開けを予感させた。新しく就任した監督であれば自らの思考にあった選手を獲得したがるのが当然だが、あくまで「現有戦力で戦える」と言及し、ロジャーズ政権後半では影を潜めていたロブレン、モレノ、オリギらも独自のスタイルに引き入れた。
また、メディア対応では、ミニョレが22秒もボール保持し続けゴールを許した時は会見で笑いに変え、ベンテケがミスをすれば「彼がまだまだ良くなるということが最高のニュースだ」とコメントするなど、クロップが前向きでユーモアのある人物であることを改めて認識させられた。
そんな彼の人柄もあり、サポーターは期待感に溢れ、「優勝できる」といったやや時期尚早とも思えるコメントさえも見られるようになった。
では実際にロジャーズ政権時と比べ、クロップ政権では勝点、得失点、各スタッツがどれだけ向上したのだろうか。まず勝点だが、1試合平均1.5ポイントから1.63ポイントに上昇している。決して急激な改善ではないがスパーズ、マンチェスター・シティ、チェルシー、レスターとのゲームを残していたこと、一から戦術を浸透させる必要があったことを加味すると悪く無い前半戦だったという印象だ。
続いて細かなスタッツを見て行く。下記グラフは1516季のそれぞれの政権下での攻守のスタッツを比較している。
勝点だけでなく得点、失点のスコアも改善されているが、それ以上にタックル、インターセプト、ボールリカバリーのスタッツが上昇している点に注目したい。必ずしもこれらの数値が上がれば勝率が上がるということではないが、クロップスタイルが吹きこまれたことがスタッツにも如実に現れている。結果として、チャンス数は増加し、被チャンス数は減少している。
「ハムストリングは今年最悪のワードだ」と監督が言うように、各ポジションでの相次ぐ離脱に悩まされているものの、着実にフルスロットルフットボールを浸透させているのは見事である。数あるオファーからリヴァプールを選択したユルゲン・クロップと共に臨むシーズン後半戦が楽しみでならない。