youll never walk aloneの大合唱の中スパーズボールで試合開始のホイッスルが吹かれた。開始5秒でボールを奪ったリバプールはまだ合唱の余韻が冷めぬ芝生の上でボールをリズムに乗せる。この1分後、ポッカリと空いた右サイドのスペースからG・ジョンソンが転がしたクロスがエリア内にいた7人のスパーズDFを掻い潜って、カブールのオウンゴールを誘発したのは偶然ではない。スパーズの守りは無残なまでに秩序が乱れ、その反対にリバプールの守備はほぼパーフェクトな包囲網を張り続けた。この守備の差を考えると4-0というスコアは甚だ妥当である。
【リバプールの守備】
コンパクトで組織的な守備とは正にこのことだ。リバプールは守備に回ると人数を掛けてボールを取りに行く局面と、相手にボールを持たせながらパスコースを限定する局面を上手に使い分け、スパーズにほとんど自由を与えなかった。
練習から守備面の意思共有を徹底して行っているのだろう。具体的な役割としてはSAS、ヘンダーソン、ジェラードがコースを限定し、スターリング、コウチーニョが狭いスペースへ追い込みながら隙を見てボール奪取。相手が強引な突破を試みた場合でもコースが限定されているため4人のDFで対処できる。
コウチーニョ、スターリングのボールリカバリー数がそれぞれ8回と9回。DF4枚のタックル成功数がフラナガン5回、ジョンソン、シュクルテル、アッガーがそれぞれ3回(アッガーはボールリカバリーも5回)を記録していることからも、組織的な守備が有効に機能していたことがよく分かる。
開始5秒のプレーから組織的な守備に対する高い意識を見せる
コースを限定し組織で奪い切る守備
【スパーズの守り】
一方スパーズの守りは正直なところ全く連携が取れておらず、コウチーニョとスターリングに自由を与え過ぎていた。中盤にこの両選手を並べたのは単に両者の調子が良かったからではなく、スパーズ中盤の守備の緩さを突いた妥当な策だったのだろう。白いシャツを着た選手達もある程度のプレスは掛けてはいたが、奪いどころの共通認識に欠けていたため単発の圧力になりがちで後が続かない。リバプールの選手達にいとも簡単に前を向かれ、楔のパスを入れられ、逆サイドへの展開、裏へのスルーパスを許していた。
シグルドソン、エリクセンのボールリカバリー数が5回、4回に留まっていることからもスパーズ中盤の守備が機能していなかったことが伺える。
プレスは掛けているものの簡単にかいくぐられる①(開始10秒のプレー)
プレスは掛けているものの簡単にかいくぐられる②
【総括】
リバプールは失点の多さが懸念されていたが、この試合では心地よいまでに完成された守備を見せ、持ち前の攻撃力をも加速させた。残り6試合、この完成度を維持できれば24年ぶりの優勝も冗談ではなくなってくる。シティやチェルシー相手にも互角以上に戦えるはずだ。
他方スパーズは、夏にベイルがいなくなった穴を埋めるべく大規模な補強を行ったものの、チームがまとまらない内にビラス・ボアス監督が解任され、シャーウッド体制になってからも依然として混沌状態。今節大敗を喫した上に怪我人まで続出する不運に見舞われ、一層秩序が乱れたことに違いない。残り6試合で立て直せるか否か…
晴天の中で行われたアンフィールドでの大一番は、正にリバプールとスパーズの”今”を象徴する一戦となった。
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